映画徒然日記Vol.25「ゾディアック」
「ゾディアック」(2007年/アメリカ)
監督 デヴィッド・フィンチャー
原作 ロバート・グレイスミス
キャスト ジェイク・ギレンホール、マーク・ファレロ、ロバート・ダウニー・jr、アンソニー・エドワーズ
1968年から1974年にかけてアメリカに震撼を与えた未解決連続殺人事件「ゾディアック事件」を題材にしたものだ。
ゾディアックとは、犯人がメディアに犯行声明を手紙で送ってきた際に「私は、ゾディアックだ」と名乗ってきたところから、「ゾディアック事件」と名付けられたとのこと。
作品中にも、映画館のシーンで出てくるがクリント・イーストウッドの代表作になる
「ダーティハリー」の一作目の犯人・スコルピオはゾディアックをベースにしてい
る。
この作品の原作を書いた、ロバート・グレイスミスこそこの作品の主人公の一人だ。
ゾディアックという犯人を追う人々の姿を映し出すだけでなく
この事件に翻弄され、人生が思いもよらない方向へ向かっていく男たちの姿を
見せていく。
デヴィッド・フィンチャーらしい、暗いトーンの画面の色調は相変わらずだが
「セブン」や「ファイトクラブ」とは違う雰囲気を醸し出している。
記者や刑事を主人公に据えながら、あまり動きが無く淡々と静かにストーリーは展開し
ていく。
この作品は、ロバート・グレイスミスが書いたものをベースに作られているが
デヴィッド・フィンチャーは、この作品にのぞむにあたりスタッフと共に
事件を徹底的に調べ直したらしい。
そして、新しい事実さえも発見した。
それぐらい、この作品に力を入れまくったデヴィッド・フィンチャーのパワーが静かに
フィルムに刻まれていて、見る者を最後までグイグイ引っ張っていく。
さすが、完璧主義監督・・・。
ジェイク・ギレンホール、マーク・ファレロ、ロバート・ダウニー・jrの三人は、
当時は、この作品のような規模の大きい映画で主役を張れるほどではなかったが
デヴィッド・フィンチャーのごり押しでこの三人に決まった。
特に、ロバート・ダウニー・jrは8歳の頃から父親から与えれていたマリファナにより
薬物に溺れて何度も逮捕され、当時はハリウッドの問題児の一人だったが
デヴィッド・フィンチャーは、彼でなければならないと抜擢された。
このデヴィッド・フィンチャーの先見の明のおかげで三人にとっては、
大きなターニングポイントになった作品になったのだ。
映画徒然日記Vol.24「遠すぎた橋」
キャスト ショーン・コネリー、アンソニー・ホプキンス、マイケル・ケイン、ライアン・オニール、ジェームズ・カーン、エドワード・フォックス、ローレンス・オリヴィエ、ジーン・ハックマン、ダーク・ボガード、ロバート・レッドフォード
ま~錚々たるキャスト陣だこと・・・。
最初のキャストロールだけでも、ため息がもれてしまうぐらい
よくもまぁ、こんなにスターをそろえたものだと感心してしまう。
戦争映画の傑作「大脱走」でも印象的な役柄を演じた
リチャード・アッテンボローがこの作品では役者ではなく監督を務めている。
監督自身も、精神病患者の役で出ているとか・・・(全然、気付かなかった)。
キャストもさることながら、戦闘シーンにも相当力を入れており
3時間中、2時間半は戦闘していたのではないだろうかというぐらい戦闘シーンだった。
序盤の空挺部隊の落下傘での降下シーンは、VFXの技術がない当時にどうやって
撮ってんの?と思う様な、とても印象的なシーンがあったり
ドイツ軍からの銃撃を受けながら、真正面から小さいボートで渡河するシーンなど見ど
ころ満載。
そんな戦闘シーンばかりの映画ではあるが、しっかりと3時間と言う長尺であるため
一人一人のキャラクターや人物関係がしっかりと描かれていて
人間ドラマとしても、楽しむことが出来る。
これだけのオールキャストを揃えて、ただのエンタメ作品にとどまらず
戦争の惨い部分もしっかりと映し出される。
なんといっても、この作品で取り上げられた「マーケット・ガーデン作戦」は
リチャード・アッテンボローの出身国であるイギリスにとっては、苦い戦いだったの
だ。
なので、アメリカ映画のように「アメリカ万歳!!アメリカ最強!!!」みたいな作品
ではなく、イギリスが連合軍として戦い、その中で経験した苦々しさが見終わった後に
虚しく心に残る。
映画徒然日記Vol.23 「IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。」
「IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。」
監督 アンディ・ムスキエティ
原作 スティーヴン・キング
キャスト ジェームズ・マカヴォイ、ジェシカ・チャスティン、ビル・スカルスガルド、ビル・ヘイダー、イザイア・ムスタファ、グザヴィエ・ドラン
やっとこそ、後編をお目にかかれた。
約2年前、前編をあまり期待をせずに、映画館に足を運びんだ。
ペニーワイズなる、ピエロの殺人鬼が不気味な中に魅力を感じさせられた。
筆者は、ピエロ恐怖症なのかゾクゾクさせられる様な恐怖感を味わった。
そんな、恐怖を味わいながらも原作者スティーヴン・キングの傑作の一つ「スタンド・バイ・ミー」のような子供達の冒険譚にワクワクさせられた。
そんな期待以上の出来栄えだった、前編と言うこともあり、後編の公開を今かと今かと楽しみにしていた。
そんな怖いもの見たさで、公開初日に映画館へ。
前編同様、容赦なくグロテスクなシーンもこれでもかと見せてくれる。
そして、相変わらず時々見せるシュールな演出にクスッと笑わされた。
そんな、ホラーでありながらシュールな笑いに観客は困惑して笑って良いものか戸惑っていた。(特に下の画像のお婆さんのシーンとか・・・)
あの子供たちが、それぞれ立派に大人になり、もう過去の恐怖の冒険譚も忘れてそれぞれ街を離れ平穏に暮らしていたが、唯一街に残ったマイクに呼び戻され27年ぶりにルーザーズクラブは再結成し、ペニーワイズに立ち向かう。
今回は、キャラクターが全員大人と言うこともあり、ペニーワイズに恐怖に襲われているのに軽口を叩ける余裕も見せるが、恐怖のどん底に突き落とされる。
主人公ビルを演じた、ジェームズ・マカヴォイを始めルーザーズクラブの面々が、前編で演じた子役たちの面影がしっかりと残っている配役は見事。
しかし、前編であった少しずつ恐怖を感じさせられる演出ではなく、最初からペニーワイズがピエロの殺人鬼ではなく、化物に変身した形態で大暴れする。
これには、正直ガッカリさせられた。
あの、ジワジワ近寄ってくる恐怖感が全くなく観客を驚かす事に重点が置かれていた。
それでも、170分と言う長尺でありながらも、全く飽きず最後まで見れるエンタメ作品としては上出来だった。
余談ながら、さりげなくヒッチコックばりに原作者スティーヴン・キングも顔を出している。
そして、若くしてカンヌ国際映画祭などで評価の高い若き映画監督・グザヴィエ・ドランもチョイ出演している。
是非、探してみてほしい。
映画徒然日記Vol.22 「一級機密」
「一級機密」(2017年/韓国)
監督 ホン・ギソン
キャスト キム・サンギョン、キム・オクビン、チェ・ムソン、チョン・イル
クソがつくほど、真面目な軍人が軍と企業の腐敗を暴こうとする姿をとてもシンプルに
分かりやすく描いた本作。
一昔(いや…もう令和じゃ三昔ぐらい)前に、邦画の社会派監督・山本薩夫の作品のような、クズな奴らに一人立ち向かう男の苦悩する姿を追っていて懐かしい気分にさせられた。
山本薩夫の「不毛地帯」にも通じる、ストーリーで重厚感はこちらはないが
あまり、重苦しくなくエンターテインメント作品としても十分楽しめた。
で、「一級機密」で注目してほしいのが軍の上層部で悪巧みをしている輩どもの面々。
みんな、ワリィ顔してんだ。これが。
筆者が、あまり韓国俳優に馴染みがないから余計かもしれないが
あまり、見た事のない皆さんが演じていて、それがより一層先入観なく
悪役として受け入れれたからなのか、絶対悪い事してらっしゃいますよね・・・と
言いたくなってしまうぐらい、キャラクターとマッチしていた。
監督のホン・ギソンは、この作品の完成を待たずにこの世を去った。
ホン・ギソンの遺志を引き継いで、完成し日の目を見る事が出来た本作。
監督とスタッフ・キャストの執念のおかげで見れたことに感謝。
主人公を演じた、キム・サンギョンが時々
漫才師の大木こだま・ひびきのこだまさんに見えてしまった・・・。
似てないか・・・・。(笑)
映画徒然日記Vol.21「イコライザー2」
「イコライザー2」監督 アントワーン・フークア
キャスト デンゼル・ワシントン、ペドロ・パスカル、ビル・プルマン
前作を、一年ほど前に見ているはずなのだが全く覚えていなくて、10分ほど見て「あれ?これ、見たな・・・」と思い、2を鑑賞。
前作を見ていなくても、支障はないが前作で序盤、冴えないホームセンターで働いてるおっさんが実はめちゃくちゃ強い無敵の殺し屋でしたって言う驚きを味わってから見た方が良いかも・・・(見た事を覚えてないお前が言うな‼︎)。
今回は、オープニングからトルコの列車に乗っているところからスタートで、殺し屋の空気満載で登場。
前作をあまり覚えてないので、前作と比べられないが、アクションというジャンルにしては派手なアクションシーンはラストの対決シーンぐらいでそこまでは人間ドラマという感じで進行していく。
監督のアントワーン・フークアとデンゼル・ワシントンのコンビは、2001年の「トレーニング・デイ」からのコンビ。
「トレーニング・デイ」では、デンゼル・ワシントンが珍しくなかなかの残酷なキャラクター、悪徳警官を演じていて、印象的な演技をしていた。
「トレーニング・デイ」で、アカデミー賞主演男優賞をデンゼル・ワシントンが受賞している。
その後も、黒澤明の「七人の侍」のリメイクであり、「荒野の七人」のリメイク「マグニフィセント・セブン」でまたコンビを組み、「イコライザー」へ。
「イコライザー」の続編を考えていることをアントワーン・フークアはインタビューで答えてらとこのことで、またこのコンビの最強無敵オヤジを観れるのが楽しみだ。
映画徒然日記Vol.20「マーニー」
「マーニー」 (1964・アメリカ)
音楽 バーナード・ハーマン
キャスト ティッピ・ヘドレン、ショーン・コネリー
何年ぶりかのお久しぶりのヒッチコック作品。
こちらは、動物パニック映画の原点「鳥」のあとに撮られた作品。
ヒッチコックの中では、後期の作品になる。
正直、う〜ん・・・って感じの作品だった。
「鳥」の前が、「サイコ」その前が「北北西に進路を取れ」その前が「めまい」とヒッチコックがノリに乗りまくっていた中期からの「マーニー」は、グンと評価が下がる。
いかんせん、役者の演技が古臭いというのもあるし(ヒッチコックの演出に問題あり?)主人公の設定が子供の頃のトラウマから盗みを働く女と言う設定があまり上手くストーリーを牽引できていない。
それに、登場人物に対して魅力を感じられる人間が居ない。
マーニーと、主人公の名前をタイトルに冠しているのに、マーニーにはめちゃくちゃ腹が立つし、マーニーの事をとことん守ろうとする男・マークの行動にも疑問が多すぎる。
この後のヒッチコックの作品も、凡作な物が増えていってしまうのが、とても悲しい。
オープニングクレジットで流れる音楽を聞いて、一発でバーナード・ハーマンが音楽を担当しているだろうなと分かるが、この次の作品「引き裂かれたカーテン」で意見の対立から残念ながらヒッチコックとハーマンは袂を分かってしまう。
なので、ヒッチコックの作品の大きな要素の一つとなっていたハーマンの音楽は、「マーニー」で最後になってしまった。
そういう意味では、とても貴重な作品なのかもしれないが、他は特段注目する様な事はないような気がする。
ショーン・コネリーがスーツ姿で登場すると、どうしても「ボンド、ジョームス・ボンド」って言うんじゃないかと思ってしまう。
映画徒然日記Vol.19 「ハードエイト」
凄まじい台風が吹き荒れています。
甚大な被害が、全国で起こっております。
こういう日は、もうまんじりともせず家で映画でも見てるのが一番利口だと思っております。
「ハードエイト」(1996・アメリカ)
監督/脚本 ポール・トーマス・アンダーソン
キャスト フィリップ・ベイカー・ホール、ジョン・C・ライリー、クヴィネス・パルトロー、サミュエル・L・ジャクソン、フィリップ・シーモア・ホフマン
台風と全く関係ない映画。
世界三大映画祭(カンヌ・ベルリン・ヴェネツィア)の全てで監督賞を受賞している、
ポール・トーマス・アンダーソンの、こちらはなんとデビュー作。
PTAのデビュー作というだけの、予備知識のみで鑑賞したがストーリーは
PTAらしく二転三転とどこへ向かっていくのだろうかと思わされる展開。
タイトル前のカットなどが、シンメトリーだったりと
やたら、カメラのパンが早かったりと
PTAの独特のカメラワークもこの頃から健在だ。
PTAの作品の多くは、孤独感だったり、疑似父子の関係を描いているものが多いが
デビュー作から、テーマも変わっていない。
サミュエル・L・ジャクソンのチンピラ役が、相変わらずの板のつき方に
ある人物を恐喝するシーンでは、思わずニヤリとしてしまった。
そして、1シーンのみの出演だったが
フィリップ・シーモア・ホフマンも登場している。
1シーンだけなのに、イケ好かねぇ感じを強烈に感じさせてくれた。
フィリップ・ベイカー・ホールが、主演を務めているだけで
渋い作品になってしまう。
もう、この人の顔の皺からハードボイルドの雰囲気が溢れ出している。
この作品を見て、一気にファンになってしまった。