映画徒然日記Vol.15 「二つ目の窓」
私の趣味は、「映画鑑賞」なのだが
もう一つ、「旅行」という物も一応ある。
一応というのも、最近趣味とは呼べなくなってしまうぐらい
「旅行」に行けていないからだ。
何故行けていないかと言うと、まぁよくある理由で
「仕事が忙しいから・・・」
現実逃避的で
「あ~どこか遠くへ行きたい・・・」
などと、甘ったれた想いにかられながらも、現実は遠くになど行けるほど
時間がない。
そんな時、「映画」は時として「遠く」へ連れて行ってくれる。
例えば、「寅さん」などが良い例ではないだろうか?
・・・と、ここまで書いていて前振りが長くなってしまった。
まぁ、単純にこの作品のパッケージを見て
何か、遠くへ連れて行ってくれるかもしれないと思わされたので手にしてみた。
「2つ目の窓」(2014/日本)
監督・脚本 河瀬直美
キャスト 村上虹郎、吉永淳、杉本哲太、松田美由紀、渡辺真起子、村上淳、常田富士男
上に書いたような、現実逃避で見たつもりが
やはり、河瀨監督作品だけあって
現実逃避どころか現実を見せられた感じだった。
この作品を見ていて、思い出したのは今村昌平監督の「楢山節考」ととても似ている作
品だなと感じた。
こちらの舞台は、奄美大島。
「楢山節考」は、寒村を舞台にしている。
それぞれ、真逆の舞台ではあるが描いているテーマは
「生と死」
「性について」
「2つ目の窓」は、奄美の海をバッグに静かに死を見つめて、生きる事を感じる。
「楢山節考」は、山奥で暮らす人々と植物や虫などの生を見つめ、死ぬとはという事を
考えさせられた記憶がある。
河瀬監督の作品は、今作と「殯の森」、「あん」を拝見しているが
特に、「殯の森」については奈良の自然の中で生きながら死を描いていた。
河瀬監督は、奈良出身で今も在住しているとのことで
河瀬監督にとって、奈良と言う地は映画を撮る上でも、生活の上でも大きいものである
ようだが、この作品ではあえて奈良ではなく、奄美で撮影を敢行した。
「私が今までにやってきた生と死の関係の表現、土地と自然、人間関係が奄美の文化によって表現されていると感じたのです」
河瀬監督は、奄美に初めて訪れた際にそう感じたとインタビューで答えている。
その後、春夏秋冬で奄美を訪れ探索し、それから1か月で脚本を仕上げたとの事。
奄美の美しい自然も、この作品の特徴だが
役者たちの演技がとても印象的だった。
村上虹郎に関しては、これがデビュー作。
村上虹郎演じる界人の母親と離婚して、今は東京で暮らす父親役を実際でも親子である
村上淳演じている。
実際に、村上淳は離婚しており役と実際の共通しているところも多く
なぜ、離婚したのかという疑問を投げかけるシーンまで登場する。
このセリフのやり取りは、河瀬監督が撮影の直前に村上虹郎に「離婚」についてのセリ
フの指示を出したのだそうだ。
それに、アドリブで答える村上淳。
河瀬監督、もう意地悪すぎますよ・・・。(笑)
こんな感じで、撮影はどこまでも現実を投影させながらしているからか
役者たち全員が、実際にそこで暮らす人々に見えるのだ。
役者たちに、実際に奄美で生活をさせてそこでの生活を染み込ませる方法で
キャラクターを作っていく河瀬監督の現実の追及には驚かされる。
そのおかげもあってか、村上虹郎と吉永淳の「目」がとても素晴らしくかった。
何かを秘めたようなあの目つきが、様々を物語っていて台詞を吐くことで語るのではな
く、こちらが何かを感じさせられてしまった。
「映画づくりにおける様々な奇跡が起こりました。撮りたいという私自身の欲望というよりは、撮る役割をいただいている。と感じていました」 by河瀨直美
久しぶりに、邦画で監督の魂と役者魂のようなものを見せてもらえた気がした一本だった。