映画徒然日記Vol.14 「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト」(後編)
昨日は、何かにとり憑かれたかのように
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト」について、
書いてしまいました・・・。
感想だけにしとけばよかったかなと、反省しつつ
あそこまで書いちゃったなら、後編も続けて書いてしまおうと開き直って
今、執筆しておりますので
お時間がある方は、お付き合いください。
昨日、投稿した前編では脚本が完成するまでを書いたので・・・・。
いよいよ、撮影がスタートするところから始めましょう!!!!
1968年4月。
イタリアのチネチッタ撮影所の屋内セットからクランクインした。
イタリアから始まった撮影は、スペインに場所を移し
そして、レオーネ初となるアメリカロケを敢行した。
撮影中は、エンニオ・モリコーネが作曲した今作の音楽をバックにかけながら撮影が行
われたという。
やはり、レオーネの作品にこの人あり!な、モリコーネの音楽が
今作の評価を、より一層上げていることは間違いない。
レオーネとモリコーネの関係は、「荒野の用心棒」からなので
レオーネが、「巨匠」と呼ばれる前の若手監督からの繋がりであり
まさしく、「戦友」なのだ。
各シーンの撮影中に、流れるモリコーネの曲に合わせて役者のテンションも高まり
その役者のテンションと音楽の滑らかなリズムに合わせて
撮影のトニーノ・デッリ・コッリもカメラを動かしていった。
クランクアップは、アメリカのモニュメントバレーで迎えた。
1968年12月。
イタリアで公開。
「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗」の興収には及ばなかったが同年度の興収3位にな
った。
翌年8月。
フランスで公開すると、瞬く間に大ヒットを飛ばす。
パリでは、2年間のロングラン!!
現在もフランスの歴代動員トップテン内に留まっている。
しかし、アメリカと日本でも同年に公開されたが不評で2時間45分のオリジナル版では
なく20分カットされて公開された。
当時は、「マカロニ・ウエスタン」は観客に飽きられており
「アメリカン・ニュー・シネマ」という新しい波がハリウッドに押し寄せ始めていた。
まさに、この映画のストーリー同様「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェ
スト」も時代遅れの作品となってしまったのだ。
1972年に、レオーネは「夕陽のギャングたち」を撮るが
こちらも、興行的には大失敗してしまう。
批評家たちは、レオーネを過去の巨匠としてしか見ていなかった。
しかし、当時の若手の映画監督やレオーネを敬愛していた映画監督(スタンリー・キュ
ーブリック、ヴィム・ヴェンダース、マーティン・スコセッシ、ジョン・カーペンタ
ー、ジョン・ミリアスなど)の評価する声により、年々レオーネの作品は注目されてい
った。
ハリウッドだけでなく、アジアでもレオーネを敬愛する声は広まっていく。
ジョン・ウーのアクション映画や日本では東映のヤクザ映画にも影響を与えている。
1984年、長年温めてきた禁酒法時代のギャングたちを描いた大長編詩
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」が公開される。
その後も、レニングラード包囲戦を映画化する企画を進めていたが
残念ながら1989年4月30日にセルジオ・レオーネはこの世を去る。
そして、2019年。
クエンティン・タランティーノが「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
を発表した。
2019年は、レオーネ生誕90年、没後30年。
そして、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト」が日本で公開されて50
年。
様々な事が重なった、まさに今年は「レオーネ年」と言っても過言ではないのだ!!!
そして、2019年9月26日。
オリジナル版から21分短縮されて「ウエスタン」として、日本で公開されたものではな
く、2時間45分のオリジナル版を「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェス
ト」として公開された。
これは、タランティーノの功績がとても大きい様に個人的に思う。
彼は、自分の作品でレオーネへのオマージュを捧げ、レオーネ作品への愛をインタビュ
ーの度に語ってきた。
そして、新作でタイトルをちょっと拝借した事でタランティーノの新作と共に
レオーネの過去の作品も注目される機会が与えられたのだ。
自分にとって、この作品を映画館のスクリーンで見られる日が来るなんて思ってもいな
かった事なんで、本当に感謝しかない。
と言っても、タランティーノにはこの声は届かないだろうが・・・。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト」は、西部開拓史という
文明の時代に取り残されていく男たちを描きながら、未来に向かって生きていく決意を
する女の物語だ。
タランティーノの「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」は
時代に乗り遅れた、かつては人気のあった俳優が付き人兼スタントマンと一緒に苦心す
る姿と、新人の女優が未来に羽ばたこうとする姿を時代と共に描いたタランティーノの
集大成であり、最高傑作だ。
タランティーノは、新作でもレオーネの影響を作品に散りばめているのがストーリーを
見ただけでも分かる。
2作品をセットで見るのも、きっと面白いだろう。
タランティーノが映画を作るにあたって、レオーネの作品は切っても切れない
インスピレーションの源の一つなのだろう。
改めて、今回劇場で見てこの作品の偉大さを痛感させられた。
ロングショットの砂漠、ドアップの男の顔。
虫の声、汽笛、銃声。
勿体ぶったように見せられる決闘シーンも
1つ1つに、全く無駄がなく何度も見ているのだがスクリーンに釘付けになっていた。
是非、この機会に映画館に足を運んで欲しい。
様々な映画に影響を与えた、今作とセルジオ・レオーネ。
これからも、この先も、この映画と共にレオーネの名前も語り継がれていくのだろう。