映画徒然日記Vol.16「少年」
久しぶりにこんなに映画を見ている気がする。
ってことは、久しぶりにこんなにブログも書かねばならない・・・。
「少年」(日本・1969)
監督 大島渚
脚本 田村孟
去年、第71回カンヌ国際映画祭にて是枝裕和監督の「万引き家族」が
パルムドールを受賞した。
ちょうど、今から50年前に撮られた「少年」は
「万引き家族」を撮る際に参考にして是枝監督はシナリオを書いたのではないかと思う
ぐらい共通している。
これは、筆者の勝手な推測ですが・・・。
「万引き家族」は、タイトル通り万引きで家計をたてている家族の物語。
「少年」は、当たり屋をしながら旅をしている家族の物語。
1966年、大阪府西成警察署に高知県出身の当たり屋夫婦が逮捕された。
当時、当たり屋は珍しいものではなかったが、この夫婦は自分たちの子供にも
当たり屋をさせていたという事で当時話題になった。
この事件に、衝撃を受けた大島渚は脚本家の田村孟とともに取材を行い脚本を書いてい
った。
大島渚という監督は、当時問題作を年に2~3本撮っていた監督だった。
撮る作品には、かなり政治的思想を強く反映させたものが多く
当時の過激思想を先導した監督と言うイメージが強い。
しかし、この「少年」に関しては政治的思想が弱まっており
淡々と当たり屋とその子供の姿を全国縦断しながら見せていく。
当たり屋を行う事を、最初は嫌がっていた少年が生きていく為に行っていく姿を
真っ直ぐに映し出している。
ドラマと言えるものはないのだが、少年を演じた阿部哲夫の土佐弁交じりの口調と純粋
さに生きてほしいと切に願ってしまうのだ。
阿部哲夫は、実際は養護施設で育った子供で「少年」公開後に養子の申し出があったが
本人は断ったらしい。
そして、この作品を最後に俳優業からは縁を切ったという。
この主人公同様、彼自身にも複雑な家庭環境から出たものがこの「少年」という作品に
鮮烈に映し出されていたような気がする。
決して、表情が豊かな子ではないが、それが尚更普通の家庭環境で育った子供では見せ
れない表情をするのが見ていてとても狂おしく胸が痛んだ。
現代でも、毎日のように親からの虐待により子供が傷つけられているニュースを見かけ
る。
この「少年」のような「少年」、「少女」たちが現代でも
私たちの知らない場所で強く生きようとしているのだろう・・・。
50年前に、このような作品を作った大島渚。
恐るべし・・・。