映画徒然日記Vol.36「誘拐報道」
・「誘拐報道」(1982年・日本)
監督 伊藤俊也
脚本 松田寛夫
キャスト 萩原健一、小柳ルミ子、藤谷美和子、宅麻伸、伊藤四郎、三波伸介、平幹二朗、丹波哲郎
1980年に発生した、宝塚市学童誘拐事件を描いていた作品。
原作は、朝日新聞社が書いたものの為
主人公は、誘拐犯の古屋だが
前半は犯人視点ではなく朝日新聞の記者たちの視点で物語が進んでいく。
中盤から、犯人とその家族の視点へと移っていく。
誘拐犯のである古屋にも、妻と娘がおり自分自身も親であり、人の子である苦悩が描かれている。
主人公の古屋を演じるのは今年の3月に亡くなった萩原健一ことショーケン。
この作品でショーケンは、誘拐犯を演じる上で2ヶ月で10キロの減量をし、どこか荒んでいる雰囲気を醸し出しながらもう後戻りができない1人の男を演じている。
今でも、何キロか減量してそのキャラクターに挑んだという話はよくインタビューで聞くが、減量した事がすごいのではなく、この作品のショーケンのように減量し、見た目だけでなくキャラクターの内面への表現に影響をさせながら演技をしてないと意味がないと思う。
今年亡くなってからショーケンと縁のあった人々がテレビや雑誌でさまざま伝説めいた話をインタビューで答えている。
そばに居たら厄介な人だったんだろうなと感じさせられるエピソードが沢山あるようだが、それでもショーケンの魅力は周りの人間、観客を魅了していたのだろう。
監督の伊藤純也としては、後半部分の犯人の視点がこの作品で一番描きたかった部分であったのではと感じるぐらい、前半と後半の熱量が違う。
金の受け渡しについて何度も電話をかける古屋。
しかし、金の受け渡し場所に行くと必ず警察が張っている為金を受け取れない。
そんな中、誘拐した子供が熱が出て苦しみだす。
そこで、これがチャンスだと電話をかけるシーンは力が籠った演出で素晴らしかった。
ショーケン意外の役者たちも、無駄に豪華。
丹波哲郎を中心にした、朝日新聞社の記者たちも昭和の名俳優たちが勢揃いしている。
しかし、最初集合しているシーンでは全員の人相の悪さに記者というよりヤクザにしか見えない。
極め付けは、最後の最後にワンシーンだけ登場する朝日新聞社の空撮ヘリコプターの操縦士の役で「ヤクザと言えばこの人」菅原文太が出演しているので、もう逆に狙ってるのかと思うぐらいだ。
昔の記者なんて、ヤクザのような強引な取材だったとも聞くので、こんな様な人相の人たちも多かったのかも・・・笑
個人的には、今村昌平監督作の「復讐するは我にあり」のように実録物ではあり、日本の鬱々とした雰囲気やドロドロとした人間ドラマなど、似ている気がした。
「復讐するは我にあり」には、及ばないがこちらの作品もなかなかの力作だ。