映画徒然日記Vol.35「サムライ」
「サムライ」(1967年/フランス)
監督/脚本 ジャン・ピエール・メルヴィル
キャスト アラン・ドロン、フランソワ・ペリエ、ナタリー・ウッド、カティ・ロシェ、ミシェル・ボワロン
アラン・ドロンが「太陽がいっぱい」で一躍スターに駆け上り、正にノリにのっている
時に出演したのが、この「サムライ」だ。
やはり、カッチョいいです・・・。
てか、今見てもきれいなお顔をされております。
で、映画ですがこの作品筆者は2度目の鑑賞。
改めて見て感じたのは、とっても変な映画だ。
とにかく、登場人物たちが謎に包まれている人物ばかりでバックボーンなどは
全く描かれることなく、ただひたすら一匹狼の殺し屋の姿を淡々と映し出している。
アラン・ドロン扮する、殺し屋・ジェフの薄暗い殺風景な部屋から始まる。
そして、部屋から出ていき曇り空の街に出ると
人の車に乗り込み、何十束にもなる鍵の束を出して一本ずつ差し込みエンジンをかけ盗
難し、愛人の家、ポーカー仲間の部屋などを訪ね歩きアリバイ作りをし、
バーへ行き、最初の殺しを実行する。
・・・・と、ここまでが約10分ほどなのだが交わされる会話は2,3言。
ほとんど、内容らしい内容があるわけではないが
セリフが極力省かれている演出により、殺し屋・ジェフや他の人物が何を考えているの
かがとても分かり難い。
これが、メルヴィルの手にかかると、とても不思議な空気感の中で物語が進行してい
く。
最後まで見ても、謎に包まれていて
見た人によって印象が違うであろう作品だ。
この作品の不思議な空気感は、登場人物だけでなくどのシーンも薄暗く
色調も灰色で、それがまた独特の空気感を醸し出しているところに
見ている側は溶け込んでいく。
その灰色の世界に身を置く、一匹狼のジェフの男の中の男の姿に思わず惚れ惚れしてし
まう。
この作品は、今私たちが接しているそんな分かりやすい映画などにも多大な影響を与え
ている映画なのだ。
二丁拳銃でやたらめったらぶっ放すことが大好きな香港のジョン・ウーなんかは
この「サムライ」、同じくメルヴィルの監督作「仁義」などにもかなり影響を受けたら
しい。
「サムライ」が好きすぎて、リメイクをしようとしているぐらい好きなようだ。
男を撮らしたら、こんなに男らしくクールに撮れる映画監督はメルヴィル以外いないだ
ろうと改めて感じさせてもらった。