映画徒然日記Vol.27 「アイリッシュマン」
監督 マーティン・スコセッシ
脚本 スティーヴン・ザイリアン
キャスト ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシ、ハーヴェイ・カイテル
1980年に、マーティン・スコセッシが監督しロバート・デ・ニーロがプロボクサーのジェイク・ラモッタを演じ、ジョー・ペシも共演した「レイジング・ブル」が公開され、その後マフィア映画の傑作「グッド・フェローズ」、「カジノ」とこのトリオは切っても切れない。
そして、最後にこのトリオで作られた「カジノ」以来、14年ぶりにスコセッシ、デ・ニーロ、ジョー・ペシ、トリオが復活したのだ。
そしてそして、スコセッシの「ミーン・ストリート」でデ・ニーロと共演し、スコセッシ映画のこちらも常連俳優・ハーヴェイ・カイテルも出演していて、
そしてそしてそして、な、な、なんと!!
あの、デ・ニーロと肩を並べ比較される名俳優アル・パチーノも出演するとなれば、これは映画マニアからすれば今世紀一番の話題作で、見ないわけにはいかない!
そんな、筆者個人的には今年はこの作品で締めくくっていいのではないかと思わされる作品が「アイリッシュマン」だ!
と、最初からテンション上げまくってしまいました・・・すいません。
これは、初日に映画館に直行や!と決意していた。
しかし、この作品なんとNetflixでのみの配信というニュースを見て絶望してしまった。
Netflixのような、配信サービスで見る事に反発があるわけではないが、やはりこういった名俳優の演技合戦や予告編を見る限りスケールの大きい映画らしい映画はやはり、映画館で観たいものだ。
そこへ、かなり限定された映画館のみではあるが11月15日にNetflixで配信されるのと同時に、劇場で上映される事になった。
本当に、ありがとう!!
と言う事で、小さい劇場ではあるが
アップリンク吉祥寺へ!
いやぁ〜!こりゃパソコンやタブレットの様な小ちゃい画面じゃ見ちゃ良さが半減しますよ〜!
家で気軽に見れる映画ならいいが、「アイリッシュマン」はしっかりと腰を据えて210分と言う長尺に挑んでいただきたい。
と、前振りが長くなってしまいましたが
作品としては、晩年老人ホームで生活しているフランク・シーラン(デ・ニーロ)の語りにより、全米トラック運転組合に所属しながら、大統領の次に力を持っていたと言われる全米トラック運転組合の委員長を務めた、労働組合の指導者であるジミー・ホッファ(アル・パチーノ)の右腕として人殺しなどの汚れ仕事を行った過去を回想していく。
この主人公が語り部となり回想形式を取る作品は、スコセッシならでは。
生肉をトラックに積み込み、トラックで各地へ届ける運転手をしていたフランクは、エンジントラブルにより、道中立ち往生しそこへたまたま出くわしたラッセル・ブファリーノ(ジョー・ペシ)にトラックを修理してもらったのが縁で裏社会へ足を突っ込んでいく。
フランクの40代から最晩年80代までが描かれるのだが、デ・ニーロ自身も今は76歳。
若い頃のシーンは、インダストリアル・リアル&マジックという、特殊効果により若返らせて演じている。
「レイジング・ブル」や「グッド・フェローズ」での、気が狂った様に怒り狂うデ・ニーロやジョー・ペシの姿は影を潜めていたのが、少し寂しくもあるが、邪魔者がいれば至近距離で銃弾を打ち込むデ・ニーロ、グツグツとサングラスの奥から静かに狂気を滾らせているジョー・ペシの存在感はさすがだ。
目に余る傲慢さで、次々と周りから愛想を尽かされていくホッファを守り抜こうとするフランクを友人として説得するラッセルの語り合いは涙もん。
一番今作で、病的に傲慢でら頑固で怒りを爆発させ狂っていたのはジミーホッファを演じたアル・パチーノだ。
1983年のブライアン・デ・パルマが監督し、オリバー・ストーンが脚本を書いた、コカインの密売でチンピラからギャングの頂点へ上り詰め大金持ちになる、トニー・モンタナをアル・パチーノが演じた「スカーフェイス」を彷彿とさせる狂い様で、観ていてワクワクさせられた。
フランクとラッセル、フランクとホッファの友情の物語であり
ホッファに振り回され、仲間を裏切り、そして家族も失ってしまう、男たちの悲哀を描いた傑作だ。
そして、もしかしたらこの様な最高のチームで作品が発表される事はそれぞれの年齢などを考えると難しいかもしれない。
それを思うと、フランクたちの悲哀と共にエンドロール中は切ない気持ちにさせられた。