映画徒然日記Vol.18「健さん」
邦画を代表する俳優というと皆さんは、誰を思い浮かべますか?
48回寅さんを演じた渥美清。
まぁ、あげりゃキリがない。
でも、皆さんの頭に過った人って
やっぱりこの人じゃないですかね?
2014年11月10日。
高倉健の訃報をテレビのテロップで出た時。
現実かどうか分からないぐらい、驚いた。
もう、23年も前になるが
渥美清が亡くなった時も同じような驚きを子供ながらに感じた。
こんな想いにさせられたのは、この2人の俳優だけだ。
そんな、健さんという愛称で愛され続けた国民スターの生前の姿を、映画関係者や家族の話を通して追っていくドキュメンタリー。
健さんと生前、チャン・イーモウ監督の「単騎、千里を走る」で共演したチュー・リンが健さんの馴染みのある場所を訪れて、健さんに触れると言う擬似ドキュメントな側面があるが、正直要らない。
構成と演出がひと昔前というか、テレビ的な演出で、ドキュメンタリー映画と言うより、NHK辺りで特集を組んだドキュメント番組のようだった。
降旗康男、山田洋次、梅宮辰夫、八名信夫、マイケル・ダグラス、ジョン・ウー、ポール・シュレイダー、ヤン・デ・ボン、マーティン・スコセッシと健さんと関わりがあったり、尊敬の念を持っている、今も映画界を支えている錚々たる人々にインタビューをしているにも関わらず、この出来は勿体ない。
しかし、それぞれのエピソードは今まで聞いたことないエピソードや健さんの違った一面が見れたのは、とても貴重で興味深く見た。
コミカルな悪役を得意としていた八名信夫は、健さんと何度も共演し、健さんに300回以上殺されたらしい。ある時悪役の役者たちに対して「殺されに行く面構えでやっていたろ。最初から殺されに来てどうする。殺しに来る面構えでやれ」と全員を叱ったと言うエピソードを話していた。
こういう、細かい所こそ映画には大事なのだ。
今、こんな事を意識して演技をしている役者が何人いることか・・・。
自分に厳しく、ストイックで、映画を心から愛し、映画に生涯を捧げられる俳優は、もう生まれないかもしれない・・・。
「健さん、ありがとう」