映画徒然日記vol.2 「黄金」
雪が深々と降る日は、家でまったり映画を見るに限るって事で、季節感で言えば寧ろ逆だろと言いたくなる暑苦しさ、むさ苦しさを感じさせる作品を鑑賞。
「黄金」
1948年
アメリカ
監督/脚本:ジョン・ヒューストン
出演:ハンフリー・ボガード、ウォルター・ヒューストン、ティム・ホルト
第21回アカデミー賞で、監督賞、脚色賞、助演男優賞(ウォルター・ヒューストン)を受賞。
《あらすじ》
メキシコ革命の混乱はほぼ収まった1920年代のメキシコ。ダブズ(ハンフリー・ボガード)は、同じアメリカ人の金持ちに金をたかってのその日暮らし。日雇いの仕事を紹介されて働くことになり、そこでカーティン(ティム・ホルト)と出会う。2人は、仕事を終え日給を貰おうとするが、雇い主は給金を持ち逃げしてしまう。2人は、街をさまよい歩き、安宿に泊まる。そこで、ハワード(ウォルター・ヒューストン)という老人が過去に金鉱を掘り当てた話をしているところに出くわす。ダブズとカーティンは、その話に魅かれてハワードと共に一獲千金を夢見てシエラ・マドレ山脈の山中に金鉱を求めて旅に出る。
この映画は、「欲望」を描いたものだ。
男たちが、協力をし合って旅に出て行く様は、子供の遠足みたいな始まりだが道のりは険しく厳しい。
めぼしい金脈を見つけ、準備を整え金を掘り出すと共にそれぞれの「欲」に疑心暗鬼し始める。
夜になり、テントを張り眠りにつく3人。
ハワードが起き上がり、テントから出て行くとそれを気にして、カーティンがテントから出て行く。ハワードが帰ってくると、ダブズがカーティンの様子を気にしてテントから出て行く。
こんな単純なシーンだけで、男たちの滑稽でお互いに対して疑心暗鬼になってる様をこんなにもシンプルで分かりやすく観客に見せる演出力は素晴らしい。
どうしても、最近の映画を見慣れている人間からすると、名作といわれる古典映画を見ても正直当時は名作だったかもしれないが、今見ると何か肩透かし的なものを感じる時がある。
現代では、「古典」と言われてしまう映画の一本であるかもしれないが、これが何のその現代でも秀作。
演出、脚本、編集、どれをとっても粗さが見当たらない。
監督のジョン・ヒューストンは、この作品が3本目。
3本目で、この安定感とこの後の作品以降の作品にも受け継がれていく
「男たちの栄光と挫折」
という、テーマをこの映画で確立している。
そして、この映画でもう一つ語らなければならないのが・・・。
ハワードを演じた、ウォルター・ヒューストン。
ウォルター・ヒューストンは、ジョン・ヒューストンの父親なのだ。
ブロードウェイの舞台で演技を磨いて、映画に出演するようになる。
そして、息子の映画でアカデミー賞で助演男優賞とゴールデングローブ賞でも助演男
優賞を受賞する。
最高の親孝行な息子の監督もすごいが、この俳優の親父の演技がこの作品の最大の魅
力な気がする。
最後砂嵐の中で満面の笑みで高笑いするあの演技、あのシーンがあるからこそ、この
映画は名作と言われ、今でも「古典」でありながらも、古臭さを感じさせないのかもし
れない。
長くなってしまったが、
クリント・イーストウッドが、1990年に
「ホワイトハンター ブラックハート」
という映画を撮ってイーストウッド自身が主演を務めているが、この映画の主人公のモデルがジョン・ヒューストン。
この映画を見ると、どれだけジョン・ヒューストンが変人でクレイジーなのかというのが静かに伝わってくる。